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ルース5

「まずは・・・」
デオンが切り出す。
テーブルの上に広げられた、先ほどの表を指差す。
「これ、一昨日のことだろう?まだ、傷あるか?」
「あるなんてものじゃ・・・。まだ腫れてますよ」
チラッと辺りを見回してから、行儀が悪いが、右足を持ち上げ、ズボンをめくって傷を見せる。
「うわ、ずいぶんとぱっくりいったんだな」
「縫わずにすんだのが幸いでした」
ちょうどヒーリング力の強い、医療班がいる試合だったのが幸いした。
傷の周りは、まだ腫れあがっているし、その周りは青痣まである。
「じゃ、これをみてくれ」
すいと紙の上で手を動かすと、紙の上にフォログラムが浮かんだ。
「うっ」
「これ、ルークの負傷部分の映像」
マジマジと自分の足と見比べる。
上から見下ろしたのと、向かい合わせてとった映像の差はあるし、ルークの方はルーシャンスのぱっくりいった部分が蚯蚓腫れのようになっているだけだし、痣も薄いが・・・酷似しているといっていい。
「・・・・・・これは・・・どういうことですか」
デオンはじっとルーシャンスの反応を見ていた。
「・・・本当に、これほどとはなぁ・・・。
 ルークの苦労が報われていたってことだけど・・・。
 あんたには、本当に酷なことかもしれないな」
ボソッという。
「酷?」
じっとルーシャンスの顔を見ている。
話すかどうか逡巡しているのか。
デオンが酷というからには、多分そうなのだろう。
が、このまま聞かずにいるわけにはいかない。
自分は一歩を踏み出してしまったのだから。
聞くしかないのだ。
目に力を入れる。

デオンも決心がついたのだろう。
「・・・この表を見て、何か気付かないか?」
表をトントンと指差す。
上から左右、下までまじまじと読んでみるが、何が言いたいのかわからない。
「・・・わかりません・・・」
「・・・そうか・・・」
デオンが大きく息を吸い込み、
「これって、あんた側がケガをしたときのデータばかりじゃねぇの?」
言った。
「え?」
言われて、慌てて目を通しなおす。
「・・・・・・・・」
愕然・・・というのはこういうことを言うのだろうか。
並んでいるデータは全て、ルーシャンスがケガをした時のものばかりだった。
ルークのものは一つもない。
「3ヶ月という短い期間だったから・・・」
思わず、言い訳がましく言ってしまう。
──が、本能的な部分では違うとわかっていた。
「それはないな」
デオンもきっぱりと否定する。
「あんたは自分で言っていただろう?
 “双子の共鳴”って。
 あんた側からの痛みはルークに伝わっている。
 ・・・が、ルーク側からは伝わっていない。
 これをどう思う?
 あ、この3ヶ月の間に、ルークは3回ぶっ倒れているぜ、念のため」
言われたこと、目の前にある表を反芻しながら、頭をフル回転させる。
過去を振り返る・・・。
いつから、ルークの痛みが自分に共鳴しなくなっていたのか・・・。
感情面では・・・?

ふと、真実がわかった気がした。
・・・と、同時に、余りの衝撃に、目の前が真っ暗になる。
頭から、どんどん血が下がっていく感じだ。
・・・やばい。

と、手に何かが触れた。
デオンの手だ。
「大丈夫か?顔色が悪いぞ」
ハッと我に帰る。
絶妙のタイミングだ。
ブンブンと頭を振る。
おかげで、貧血を起こしかけていたのが、踏ん張れた。
「大丈夫です・・・」

見つけた、多分これが真実。
「ルークなんですね?ルークが俺に共鳴しないように・・・。
 ずっと、抑えて・・・。
 それも、かなり昔から・・・。
 ・・・なのに、俺は抑えることもせず、ルークに共鳴させていた・・・」
気付いてしまえば、『なぜ気付かなかったのだろう』と思う。

トン、トン。
デオンが指で手を叩いてくる。
元気を出せということらしい。
うつむいていた視線を上げ、顔を見る。
「そんなに自分を責めるな」
眉が下がって、困惑している。
・・・自分がきっかけを作ったくせに。
そう思う反面、知ってよかったとも思う。
もちろん、まだ、しばらくダメージからは立ち直れないだろうが。

「いつからなんですか?」
「結構、昔からだと思う。
 俺と会ったときには、予測できる痛みの方はほぼクリアしていたな。
 運動の時とか・・・薄いバリアを張って、体を保護していたから」
「はぁ」
ますます、気付かなかった自分に落ち込む。
「感情面をコントロールするために・・・作ったのが、さっきの薬だ」
「え?あの薬?」
「俺が学生の時にはもう出来上がっていた。
 コツをつかんで、今では、薬なしでも全く問題ないらしい」
デオンが少し悲しげに言う。
「え?つい最近のものじゃないんですか?」
「もう、10年位前のものだ。
 異動を機に思い出して、ルークに再現させたんだ。
 あれこれ使い道が浮かんでな」
てっきり、デオンの依頼で開発したものだと思っていた。
それが、自分との共鳴力を抑えるためだったとは。
本当に・・・俺は何も知らなかったんだ・・・。

「お、俺はどうしたらいいんでしょう?」
うなだれるばかりになっていた頭を上げて聞く。
「う~ん、もうちょっと体に気をつけてもらえばいいかな?感じなんだが」
「えっ」
そんな簡単なことでいいのだろうか。
顔に出ていたんだろう。
「不意のものはしょうがないんだ。
 ただ、ケガが予想されるような場合は、あらかじめシールドを作ってもらうとか。
 そんなものでいい」
デオンがさらりと言う。
つまり、一昨日のサッカーのような場合は、ケガの可能性もあるし、シールドをということか。
「・・・わかりました」
シールド系は苦手なんだが。
と、デオンが言う。
「あんたはシールド系が苦手みたいだけどな。
 ま、努力してくれ。
 ダメなら・・・。
 スパルタ教師を派遣するが?」
にんまりしている。
さすが、下調べしてあるだけのことはある。
「え、遠慮します」
それにしてもなぁ・・・。
また、思考の渦にはまりだす。
「あんまり自分を責めるな。
 第一、あんたのおかげでルークはシールド系は大得意だ。
 ヒーリング能力も高い。
 おまけに、薬やドロイドの開発で社会貢献中!
 悪いことばっかりじゃないんだぜ」
励ましてくれているんだろう、ウィンクしてよこした。
「はい・・・」
ありがたいけれど、一度知ってしまった以上、落ち込まずにはいられない。
「はぁぁ」

「ところで、だ」
言われて、顔を上げると、デオンがこちらに身を乗り出している。
「はい?」
思わず、つられてこちらも身を乗り出す。
「今日の件、俺の単独だから。他言するなよ」
「え?」
一瞬、言われた意味がわからなかった。
「あの・・・調査とかで、人手がかかってますよね?」
「もちろん、自腹だ。・・・あ、多少、権力を傘に着てお願いした部分もあったが」
ま、どこかでフォローするからお互い様だ・・・みたいなことを言って、にんまりしている。
「じゃ、もちろんルークは?」
「知るはずないだろう。言うなよ」
最後の瞳からの強い視線でルーシャンスは黙るしかなかった。


「じゃ、これで」
ルーシャンスの混乱が落ち着くまで、たわいのない話をした後のこと。
店を後にし、ルーシャンスと別れる角先で、デオンは言った。
「あ、ありがとうございました。
 これからも、弟をお願いします」
おもいっきり頭を下げる。
ガシガシ
髪の毛をおもいっきりかき混ぜられる。
「まかせろ。
 あんたこそ、泣きそうな面しているぞ。
 美人の母ちゃんに慰めてもらえよ」
じゃな。
今度こそ、背を向けて歩き出す。
デオンの遠ざかる背を見て、ルーシャンスも歩き出した。
浮かぶのはマールや子ども達の顔。
早く帰りたい・・・、そう思う。
そうじゃないと、情けなくて泣いてしまいそうだ。
そして、ふと思う。
『ルークは泣くことがあったのだろうか?』
ルークの泣き顔といえば、ほんの幼い頃のものしか思い浮かばない。
自分には支えとなる家族がいる。
『だけど・・・ルークには?』
ふと、さっきまで話していた男の顔が浮かぶ。
『・・・俺、とんでもないお願いしちゃったのか?』
一瞬、うろたえる。
──が、
『ルークのよりどころがあるのだとしたら・・・。
 それはそれでいいのかもしれない』
重かった心が、心持ち浮かんだ気がした。

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えっと、ルーク外伝、“ルース”シリーズはひとまずここで終了です。
ありがとうございましたm(__)m
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No title

スパルタ教師・・・・て、もしかしてあのヒトですか・・・・

☆かほりん

> スパルタ教師・・・・て、もしかしてあのヒトですか・・・・

いえ・・・。
あの方に教わらないのなら・・・というニュアンスかと。
──あの方以外のスパルタ教師って誰でしょう?
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ただの物語・断片16

先週降りてきた物語です。きっかけはwakka○さんのブログ「魔女の家頁」に載った「ルース5」を読んだこと。これを読んだらダウンロードされてしまいました。なのでせめて「ルース1」から5まで読んでいただくか、本当の初めの「ルーク1」から順番に全部読んでいただく...
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