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過去のことだとわかっている。
変えたいとかでもない。
当時、デオンがルークに仕事の詳細を話せなかったのは、重々承知していたし、理解しているつもりだ。
『それでも・・・』
ルークは溜息をついた。

-----------

「うん、違和感はない。
 そう伝えてくれ。
 ま、俺を買被ってないか?とは思うがな。
 これは、主観の差だろう」
そう言って、デオンは文字が写るモニタを消した。
両腕をぐいーと伸ばしながら、背中をそらせる。
座っている椅子が軋む。、
「わかった、伝えておく」
ルークは受けて言った。
デオンは先ほどまで、エル・フィンの本体からの依頼で、ルークの本体-ルークをはさんで、エル・フィンとデオンの出会いの話をチェックをしていた。



「・・・で?お前は何を考え込んでいるんだ?」
そういいながら、デオンは椅子から立ち上がり、ルークの元へとやってくる。
ルークはデオンが物語に目を通している間、返事を待ちながら、立ったままボーっと自分の考えに沈み込んでいたのだ。
「ああ・・・」
結論が出るようなことではない・・・。
自分でもはっきりとわからない、このモヤモヤしたものをどう話せばいいのか。
デオンが更に歩み寄り、ルークの背に手を回し、引き寄せられる。
間近で視線を合わせられ、「言ってみろ」と促される。
ルークは顔をずらし、デオンの肩口に額を当てた。
「・・・当時もわかっていたし、今もわかっているんだ」
「俺の戦場でのことだな」
顎を引いて、同意する。
「話して欲しいとかじゃない。話せなかったのもわかっている。
 ただ、ちょうど、学生時代の話をしていて。
 俺が馬鹿をやったり、気ままに仕事をしていた時に、
 デオンが戦場にいたことを今更ながらに実感して・・・愕然としたんだ」
デオンが腕に力を込め、ルークを抱きしめた。
ポンポンとデオンが背中を叩く。
「過去を変えたいとか・・・そういうのじゃなくて。
 ただ、すっきりしないだけだ」
とりあえず、自分が感じていることをルークは吐き出した。
「そうか」
そういいながら、デオンは更に背中を叩く。
まるで、“よくできました”と言われている気分だ。

『あれ、普段だったら、デオンも深刻な顔をするのに』
ここに来て、ルークはデオンの様子に気付く。
『・・・ちょっと、機嫌がいい?』
何がデオンの機嫌をよくさせているのかわからず、ルークは戸惑っていた。
デオンが腕を動かし、ルークの頭をなでる。
「──今だからいえる話だ。
 ***の中級課程を卒業後だと、始めからかなり上の方に配属される。
 だけど、当時、若くて生意気だった俺は、
『一番下を知らなくて、何が士官だ!』って」
側にいるからこそ感じる、かすかな、苦笑い。
「第一、同じ年の奴はみんな一番下っ端からの、年齢だったし。
 経歴を書き換えて、軍にもぐりこんだんだ」
「ええっ」
思わず顔を上げる。
経歴を詐称するならまだしも、書かないって・・・。
第一、ちゃんと身辺調査をしなかったのか?軍だぞ??
ルークの顔から、疑問を読み取ったのだろう、
「もちろん、後からばれたけどな」
こっぴどく叱られたぞ。
そう言って、デオンはにやりと笑う。
エル・フィンさんの本体、たか1717さんのブログ“スピ☆ライフ”
そちらに載っている、“ただの物語22 戦場”の裏話です。


物語の前、

>一応某経由にて相手には確認済み(苦笑)

の某経由は・・・お分かりの方はお分かりだったと思いますがw、
たか1717さん → wakka○ → ルーク → デオンさんという流れでした。

そして、物語の後に、たか1717さんが書かれているように、

>ちなみにこれのすり合わせをお願いした時に、友人とこでは何かひと悶着があったとかなかったとか(苦笑)

ひと悶着・・・というか・・・若干ギクシャクしたというか・・・。

初めに読んだのは、私だけ。
『へ~~~、こんなことがあったんだ~』とお気楽な反応。
で、次、ルークと一緒に読んだら、ルークが「・・・・・・」
この時、私自身は“スタンプシリーズ”を書いてました。
一応、元は一緒(?)なので、なんとな~く、ルークのモヤモヤは察し、
『こりゃ落ち着くまで放っておいたほうが良いや~』と、判断。
「じゃ、時間のある時にデオンに聞いておいてね」とお任せすることに。
・・・それでも、気になったので様子を伺ってみたら、
なんかデオンとルークがギクシャク?
『私がどうこう出来るわけじゃないし』ととっとと切断してしまいました。

これは、落ち着いた後にDLしたお話です。

“ただの物語22 戦場” 裏話1 へ
「・・・ってさ~、聞いてる?」
カレンが、ルークの背中をビシビシと叩く。
酔っていて、加減ができないようで、痛い。
ルークの全快後、班の研究方針をまとめ上げ、教授からO.K.をもらったお祝いにと、5人で研究室に酒やつまみを持ち込んで飲み会をしていた。
「うん、聞いている」
こと細かく、自分が熱を出した時のことを聞かされた。
「──で?カレンは何が言いたいんだ?」
余りにも長すぎて、カレンが言いたいことの意図がつかめない。
『酔っ払いのたわごとで済ませてもいいのだろうか?』
とすら思えてくる。
「つまり、カレンはデオンさんがルークを構い倒すのが面白かったんだと。
 で、どういう関係か?と聞きたいんだよ」
タイラーが簡潔に言う。
「構い倒す??
 え、あれって構い倒されてる?」
ルークは率直に答える。
昔からあんな感じだが。
ルークの答えを聞いて、2人はガックリと肩を落とした。
「そりゃ、あんなに世話やかれていたじゃないか」
セインまで言う。
「ふ~~ん」
ルークはまったく自覚していない様子で、他人事のような返事だ。
「ふ~~んって・・・」
セインがたしなめようとすると、
「ま、言葉通りなんじゃないの」
アルフが言った。
二人から聞いた様子からだが、子どもがいるアルフからしてみれば、デオンの構い倒しは、自分に・・・というよりは妻に似たものを感じた。
第一、二人が恋人同士とかならば、そこはかとなく流れる空気というものがあるはず。
もちろん、短時間だけ会った自分が感じなかった可能性もあるが・・・、そういったものは感じられなかった。
「“生活感がないので、時々様子を見に来てます”って本人も言ってたし。
 ある意味、保護者か・・・兄みたいなものなのかもな。
 できの悪い弟を持った」
アルフは自分の感じたままを、口にしてみた。
しかし、残りの3人は若干、納得いかない顔をしている。
・・・が、実際にはきっとそうなんだろうなとも思う。
このルークなのだから。

「あ~~、言われてみれば・・・。
 実の兄よりも、兄らしいかも」
ルークが、アルフの言葉を聞いて、ボソッと言う。
「えっ、ちょっと待った!」
カレンが言う。
セインは思わず腰を浮かせる。
タイラーとアルフも顔を見合わせた。
「うん???」
ルークが首を傾げる。
「ルークって、お兄さんいるの!?」
噛み付きそうな勢いで、カレンが聞く。
「うん、いるよ。あれ?言ってなかったっけ??」
「「聞いてないよっ」」「「聞いてないぞ」」
4人の声がはもった。

「・・・すごいな」
「・・・うん」
さっきと同じやりとりをしている二人。
リビングの入り口で立ち尽くしている。
目に映るのは・・・ルーク。
二人が来たのにも気付かず、積み上げた本のページを勢いよくくくっては、メモを挟みブツブツ言っている。
集中している時のルークはいつもこんなだが、
「熱・・・下がったばかりだよな」
セインがつぶやく。
「なんでも、熱でうなされている時に、
 アイディアが浮かんだんだと忘れないうちにって、
 起きてからずっとあれだ」
それを耳にしたデオンが、飲み物を出しながら、言う。
明け方近くになり、熱が下がり、やっと熟睡。
お昼近くにガバッと起きてから、こんな感じらしい。
二人は促されてソファに座った。
手馴れた様子で、ルークが積み上げた──多分、目を通した後と思われる──本の塊をよけ、食事の準備を始めた。
すべて、準備が整ったところで、デオンが、「ルーク」と声をかける。
もちろん、反応はなし。
肩に手をかけ、「ルーク」と呼ぶ。
「そんなんじゃ、ダメだって、ガンガン揺らさなきゃ」
カレンが立ち上がろうとする。
「ああ、デオン」
ルークがふと、気がついた。
手を洗って来いといわれ、ふらふらと立ち上がって、洗面所に消える。
「い、今、何した?」
「あ?」
ガンガン揺らしてもなかなか気付かないルークが、すぐ気がついた。
どうやって?
カレンはもとより、セインだって知りたい。
が、デオンは「たまたまタイミングがよかっただけだろう」と言って流してしまう。
『ああ~~、この二人はどういう関係なんだ!?』
カレンとセイン、二人の疑問はさらに深まった。



「あのさ~、ルーク、ちゃんと紹介しようとは思わないの?」
食事の合間、カレンがルークに問う。
「え、何が?」
一人だけ3人とは違う食事──リゾットのようなもので湯気が立っている──をふーふー冷ましていたルークが返事をする。
「~~っ、だから、グラッシェアンスだよ、俺たちほぼ初対面なんだけどっ」
「え・・・そうだっけ?」
その言葉に、脱力するカレンとセイン。
「普通に話しているし、仲良さそうじゃん」とまで言う。
「だーーー、それは、グラッシェアンスが気を利かせて・・・。
 俺たち同じ年だってわかったから、こうやって」
カレンは言いながら、段々と馬鹿馬鹿しくなってきた。
実際、買い物に行く前、デオンが「多分、自分の方が年下だから言葉は気にしないでください」と言い出すまで、お互いがかなり気を使って話していたのだ。
カレンとセインはデオンの方が年上だと信じていたし。
結果、確認してみれば、3人とも同じ年で、じゃ気楽に行きましょうとなったのだが。
『こういう奴だとはわかっていたけれど・・・』
「はぁぁ」
カレンは盛大に溜息をついた。

「えっと、デオン。***からの付き合いの友人。あ、先輩?
 んで、こっちがカレン。あっちがセインで、研究室の友人」
「思いっきりはっしょっているじゃないか~!」
フルネームですらなくて、こっちだのあっちだの、カレンが怒る。
「まあまあ、落ち着いて」
セインがなだめる。
当の本人はもう、済ました顔で食事を続け、先輩がプラスされたものの、同じ友人カテゴリーにまとめられたデオンはと様子を伺えば、全然、気にしていない様子だ。
「よろしく」
そういって、改めて二人に頭を下げる。
「いえ、こちらこそよろしくお願いします」
セインはそう言って、ぐいとカレンの頭も一緒に下げた。
「・・・って感じ」
カレンとセインは昨日の顛末をアレフとタイラーに語って聞かせていた。
最上級課の生徒専用部屋でのこと。
「君達、ルーク君のところに言ってきたんですか?」
「は、はい!」
予想だにしていなかった、声をかけられ、飛び上がるようにして、セインが答える。
いつのまにかドアが開けられ、担当教授がにこやかに立っていた。
『気配感じなかったぞ!?』
『こ、怖えぇ』
それぞれ、目で会話する。
「大丈夫だったでしょう?」
「はい」
セインとカレン、二人で返事する。
「デオンくんが来ている時は、彼に任せておけば大丈夫。
 私も鬼じゃないんですから、あのルークくんが一人なら、
 ちゃんと君達に様子を見に行くよう、言いますよぉ」
ふふふふと笑う。
「センセイ、グラッスアンスのこと知っているんですか?」
驚いて、カレンが聞く。
「グラッシェアンスでしょう。
 知っているも何も、彼だって科は違うもののここの生徒でしたし。
 卒業後もちょくちょく顔を出しているじゃないですか~。
 第一、昨日連絡をくれたのは彼ですよ」
ルークくんがよくなれば、彼も顔を出すかな~、などと一人つぶやき、教授は行ってしまった。
「ええっ、ちょくちょく!?」
カレンの声が響いた。

「そんなに気になるならさ、連絡してみればいいだろう?」
アルフが言う。
「だってなぁ・・・」
セインとカレンは顔を見合わせた。
2年余分にルークと付き合いのある自分達が、今までデオンに会ったことがないのが無性に気になっているのだ。
「夕飯をご馳走になった御礼に~って、
 昼ごはんでも買っていけばいいだろう」
タイラーがアイディアを出す。
なんだかんだ言っても、アルフとタイラーも、あのルークを構い倒す男というのに興味がある。
「そ、そっか。連絡してみるっ」
そういって、カレンは部屋を飛び出していった。



ルークの家までの道。
ふと、視線を上にあげた、セインが足を止める。
どうした?と怪訝な顔で、セインの視線を追ったカレンも足を止めた。
「・・・・・・すごいな」
「・・・うん」
ルークの部屋のベランダに並ぶ洗濯物。
その光景は、圧巻だった。
学生という身分上、洗濯する間があったら、勉強・・・もしくは遊びに時間を使いたいと、自動で洗濯・乾燥してしまうものが多い。
セインもカレンも洗濯から乾燥まですべてマシン任せにしていた。
その上、学園都市ともいえる****、中でも主に学生用の寮・マンションが並ぶこの地域では洗濯物を干している家は稀だ。
実際、見上げたルークが住むマンションでも、目に入る周りの棟でも、洗濯物を干している家は片手で足りるほど。
その、洗濯物を干している家の中で、今日、ダントツに目を引くのがルークの家。
ベランダの手すり全体を使ってきっちりと干された、シーツ。
渡されたロープにぶら下げられた洗濯物の量。
「あれってさ~、どう考えてもルークじゃないよね」
カレンが言う。
「そりゃそうだ」
「・・・ってことは。やっぱり・・・」
『デオンか』
二人はまた顔を見合わせた。

視線の先には、ゴムを銜えたまま、髪の毛を手でまとめているエルンスト。
視線を若干下に向け、真剣な面持ちでいる姿は、凛としている。
そうこうするうちに、ゴムを手にして髪の毛を襟足から少し上のところで縛り上げた。
普段、口数も多く、軽い口調の男だが、いざ剣を持った時の集中力は違う。
「じゃ、始めますか」
そういわれ、お互い、距離をとる。
向かい合い、礼。
「久しぶりだよね」と言われて、ルークは微笑んだ。
何万年もの時を、久しぶりというなんて。
(でも・・・実は、数十年前も、数百年前にだって自分達は姿を変え出逢っているのだが)

キーン
剣の歯と歯があたり、音が響く。
若干ルークは押され気味だ。
『やっぱり、長剣練習を逃げていた報いだな』
クリロズに存在するようになり、それなりに体も武器もメンテナンスしてきたが、
長剣だけはめったに持つ気にならなかった。

それが久しぶりに手にし、こうやって手合わせをすることになったのには、
時代が変わりつつあるから。
武力をもって何かするというのではないが、こうやって体を鍛えておくこと、
動けるようにしておくことは、今後のフットワークにもつながる。
最近、そんなことを考えるようになっていたルークに、
「たまには、剣の手合わせなんてどう?」と言ってきたのがエルンストだった。
二つ返事で引き受ける。
というか、願ってもない申し出だった。

「脇が甘い」
そういって、エルンストが剣を振るう。
ガッ ヒュン
それをカバーした後、すぐに剣の向きを変え、攻めに転じる。
カン カン カン ザッ
すべての攻撃をエルンストに止められ、距離をとる。

「しばらくは、長剣で練習だな」
そういって、エルンストがにやりと笑った。
チャイムが鳴る。
セインとカレンは顔を見合わせる。
お互いが思うこと。
出た方がいいのか?
ガチャ
ためらっているうちに、玄関のドアが開く。
玄関へのドアを開けたままだったので、リビングにいたカレンからは様子が見える。
「なんだ、グラッシェアンスか」
そういって、無意識に入れていた力を抜いた。
・・・と、手にぶら下がるたくさんの荷物。
「だ、大丈夫か?」
慌てて、立ち上がり、デオンに駆け寄る。
「持つぞ」
そういって手を伸ばすと、
「じゃ、これを」
と、紙袋を渡される。
袋から感じる温かさと、開いた口から立ち上って香る、パンの匂い。
「あ、うまそう」
思わず、声が出た。
カレンを残して、デオンはリビングに急ぐ。
買ってきたものを、とりあえずテーブルの上におき、迷うことなく一つの袋に手を伸ばす。
小さな箱を開けながら、寝室に入って行った。


「どうだ?」
デオンは跪きながらセインに声をかける。
「さっき一度目を冷まして、水を飲んだ」
枕元に、箱から出した──体温計を置き、ルークの額に乗るタオルを取り上げた。
ベッド下においてある、洗面器の水にタオルを浸し、絞り、それをルークの額に乗せる。
乗せた、タオルに手のひらをそっと置く。
流れるような動きをセインはただ側にいて見ていた。
視線を感じ、ふと振り返ると、カレンが部屋の入り口で様子を伺っている。

「・・・デオン」
うつらうつらとしていたルークが言い、閉じていた目を開く。
『「誰?」じゃないんだ』セインはルークの言葉の差に気付く。
デオンは枕元に置いた体温計を手にし、
「体温計を買ってきた。ほら、計ってみろ」
そういって、ルークに差し出す。
「うん」
だるそうに・・・それでもルークは体をねじり、左手を伸ばす。
「あ、そうか」
デオンはルークの伸ばされた手を軽く押し戻し、
「俺がやるからいい」
そう言って、ベッドの端に左腕を付き、ルークの襟から体温計を持った右手を入れる。
左手で右腕を軽く持ち上げ、体温計を挟みこんだ。
「しばらくじっとしていろ」
そう言って、部屋を出て行った。

デオンは買ってきたものをごっそり抱え、キッチンに向かう。
てきぱきと冷蔵をあけ、しまっていく。
とにかく動きにムダがない。
そして最後、ごそごそとしている。
何をしているのか気になったカレンは、そっと立ち上がってカウンター側から覗き込んでみる。
「水枕?」
デオンが手にしていたのは、箱から取り出した水枕だった。
「ああ・・・。
 一人暮らしするなら、買っておけって言ったんだけど。
 体温計も買ってないし・・・まったく・・・」
そういいながら、ざっと水枕を洗い、買ってきた細かい氷をザラザラと枕に詰めている。
最後に、水を入れ栓をする。
・・・と、それを片手に、洗面所に入っていく。
「あれ?」
『寝室じゃないのか?』と不思議に思うが、出てきた時にカレンは納得する。
バスタオルでくるんだらしい。
『本当に細かいところまで気が付くな』
半分呆れてそう思った。



「すげーー」
テーブルを見るなり、セインが声を上げる。
ぎっしりと並んだ料理の数々。
「そうだろう~」
自分が作ったわけでもないのに、カレンが胸を張る。
デオンも戻ったことだし、今度こそ帰るか、というときに、
「夕飯を食べていかないか」と声をかけられたのだった。
ためらう二人に、
「昨日の夜からまともなものを食べていない」
というデオン。
聞けばルークの看病で、簡単な食事しかしていないという。
「一人分つくるのも、三人分つくるのも変らないから」
という言葉に、二人は甘えることにしたのだった。
──で、出来上がった料理は、二人の想像以上。
ちょうどルークが眠り込んでいる間に、3人は食事を済ませた。

額がふいに軽くなる。
『あれ?』
浮上し始める意識。
・・・と、ひんやりしたものがまた額に乗せられる。
冷たくて心地よい。
『濡れタオルか』
位置を調節し、最後にほんわりと手のひらで押さえられた。
その感覚に違和感を覚える。
『この手は知らない・・・』
「誰?」
そういって、ルークは目を開ける。
開いた目の先には、セインがいた。
「セイン・・・」
出した声は自分のものじゃないようだ。
「ルーク。大丈夫か?」
そう聞かれ、頷き、「水・・」と言う。
喉が渇いてしょうがない。
「カレン、水持ってきて!」
顔をそらし、セインが言った。
『カレンも来ているんだ・・・』
そう思いながら、額のタオルを手に取り、水を飲むために体を起こす。
「ルーファ、大丈夫か?」
コップと水の入ったボトルを持った、カレンが顔を出す。
言葉なく、頷く。
コップに手を伸ばし、ゴクゴクと中の水を飲む。
「はぁ・・・」
やっと人心地ついた気がする。
「あれ・・・?俺、ドア開けたっけ?」
二人がここにいるってことは、自分がドアを開けたのだろうか、記憶にない。
二人は顔を見合わせる。
「覚えていないのか?グラッシェアンスが入れてくれたんだぞ?」
カレンが言う。
「・・・デオンが?じゃ、あれは夢じゃなかったんだ」
玄関先に3人がそろっていると思った、あれ。
が、肝心のデオンがいない。
「デオンは?」
もう帰ったのだろうか。
そんなことを思いながら、聞く。
「いや、買い物に行っている」
「じき、戻ると思うぞ」
そういわれ、ほっとした。
「もう少し、横になれ」
セインにそう言われ、横になる。
体を起こしているだけでも体力を消耗したようだ。
「少し寝ろ」
カレンの声に、目を閉じた。
手に持っていたタオルを引き抜かれる。
しばらくして、また、額につめたいタオルが置かれた。
その冷たさを心地よく感じながら、眠りに落ちた。
どうぞといわれて、居間に上がり込んだものの、どうしたらいいのかわからず、カレンとセインはキョロキョロする。
「ああ、かけてください」
寝室から男が出てきながら、立ち尽くしている二人に声をかける。
「あ、あのっ。これ、アイス」
カレンが持っていた袋を差し出す。
「アイス・・・」そういいながら男は受け取る。
こくこくと頷きながら、
「熱が高いときは、これがいいって聞いたから」
というと、男は目を細めた。
「ありがとうございます」
ぺこりと頭を下げ、キッチンに入っていく。
ルークが借りている部屋は・・・対面式のキッチンといえばいいのだろうか。
結果、シンクをはさんだ向こう側にいる男の動きがよく見える。
慣れた感じで、冷蔵庫のドアを開き、手早くアイスを入れている。
「飲み物いれますね。コーヒー?紅茶?」
「コ、コーヒーで結構です」
セインとカレンは同時に言った。

「どうぞ」
「どうも」
二人はぴょこんと頭を下げる。
男は手馴れた様子で、3人分のコーヒーを淹れ、テーブルに置いた。
二人の分は、ちゃんとソーサーが付いたお客様用のコーヒーカップだが、男の分はごついマグカップだ。
ひょいとカウンターにトレイをおき、男は二人が座るソファに対して、直角においてある一人掛けのソファに座った。
オレンジがかった金髪。
前髪をカチューシャのようなもので、ぐいと上げている。
朱色の目。
落ち着いた物腰。
カレンとセインはお互いをつつき合う。
どちらが、声をかけるか牽制し合っていた。
男がコーヒーを一口のみ、二人に目を向ける。
「グラッシェアンス=デオンです。
 ルークとは学生時代からの友人です」
ぺこりと頭を下げる。
慌てて、二人も、
「カレン=*****です。今同じ研究班です」
「セイン=****です。同じく、研究班が同じで・・・」
とぺこぺこと頭を下げる。
・・・と、一瞬の沈黙。
なんとなく照れくさいというか、居心地が悪いというか。
そんなものを3人して感じる。
「あ、あの!グラッシアンスさんは学生時代というと・・・?」
カレンがいつになく緊張して言う。
「カレン、名前、間違っているぞ」
セインがカレンを小突く。
「ええ?」
無意識に言ってしまったカレンは慌てる。
「言い難いんですよね、グラッシェアンスって。
 ファーストネームはデオンなので、デオンでいいですよ」
デオンは口元を緩め言う。
「ルークが***入学で、寮で同室だったんですよ。
 以来・・・。
 今は、仕事に就いてますが、時々こうして遊びに来ます」
「ほへぇ」
カレンが間の抜けた声を出し、セインを見る。
『そんな長い友人がいるとは知らなかった』
班員5人のうち、タイラーとアルフは新課程の今年度、入学・・・というか編入してきて、ルークとの付き合いはほんおの数ヶ月と短い。
対して、カレンとセインは、もう一つ前の課程からの編入で、2年以上ルークと付き合っていて、自分達は長いほうだと思っていたのだ。
「長い付き合いなんですね」
思わず、実感をこめてセインが言う。
「気を悪くしないでください。
 あいつは・・・こうやって面と向かって会わない限り、
 人のことを紹介するとか、考え付かないから」
デオンは二人の気持ちを察してか、そういう。
「ああ・・・」
二人して納得する。
言われてみれば、他の学校の知人なども、こちらが知っているか聞かない限り、ルークから○○と知り合いなんだと聞いたことはない。
後から、知り合いだったと知り、びっくりしたことが何度かある。
納得したものの、なんとなく気まずい。
『どうも、デオンに任せておけばルークは大丈夫そうだ』
そう判断し、セインは隣のカレンを小突き、
「ルークも大丈夫そうですし、俺たちそろそろ」
そう切り出す。
合わせて、カレンも「そうそう」と言う。
が、デオンは顔を曇らせた。
「何か急ぎの用がありますか?」
そう聞かれれば、「いや、特には」と二人で答えてしまう。
「じゃ、申し訳ないんですけど、買い物に行きたいので、その間ルークを見ていてもらえないでしょうか」
そう言って頭を下げられた。
耳に付く音。
それが、来訪者を告げるチャイムの音だとやっと気付いた。
『今日は、デオンがくることになっていた!』
ガバッと体を起こし、玄関まで急ぐ。
途中感じる違和感・・・。
体が思うように動かない。
『第一・・・俺、ソファで寝ていなかったか・・・』
さっき、自分はベッドから起き上がった。
『あれ・・・同じようなことしなかったか?』
変なデジャビュ。

ガタン
いつも通り玄関へのドアを開けたつもりが、力加減がうまく行かず、勢いよく開いてしまい大きな音が立った。
バランスを崩しそうになり、おもわずドアにしがみつく。
視線を玄関に向けると、そこには玄関ドアを内側・・・部屋側から開けるデオンと、玄関ドアの向こうからこちらをのぞく、カレンとセインの姿を見たと思った。
ぐわんと頭が痛くなる。
「あ・・・れ・・?」
目の前が真っ暗になる。
「馬鹿っ、その体でっ」
デオンがそう言った気がした。



 管理人に鍵を借りに行くしかない。
 そう思い、きびすを返したところで、ロックが解除された。
 「ルーファ、大丈夫か!」
 少し開いたドアをぐいと開けながら、カレンは叫ぶ。
 ・・・が、目の前にいたのは、見知らぬ男。
 「誰?」
 目を丸くして聞く。
 ガタン
 玄関奥のドアが開く。
 そこにはドアにすがるようにして立つルークの姿。
 「あ・・」
 頭を押さえながら、ルークがよろめく。
 「馬鹿っ、その体でっ」
 目の前にいた男が体を翻す。
 かろうじて、床に倒れこむ前に、ルークの体を支えた。
 「・・・はぁ」
 セインとカレンは、飲み込んでいた息を吐いた。
 間に合ってよかった・・・。
 そう広くない廊下で、男は何度か腕の位置を動かし、最後にはルークを抱えあげた。
 二人に視線を送り、「とりあえず、どうぞ」といい、奥に姿を消した。
 カレンとセインは顔を見合わせ、とりあえず、部屋に入ることにする。
 「すげーな」セインが声を潜めカレンに言う。
 「うん、本当」カレンも素直にそう思った。
 あのルークを抱えあげるなんて。
 身長も180近いし、見た目よりは筋肉も付いている。
 そう考えれば、体重だってそれなりにあるはずだ。
 それを、重そうな様子もなく・・・どちらかというと飄々とした感じで抱えあげていった。
 「俺には無理だな」
 小柄なカレンが言う。
 引きずって歩くのだって怪しい。
 「俺だって」
 
 「何者だろうな」
 セインがつぶやく。
 カレンも同感だった。

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