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日食セレモニーの数時間前のこと。



広がる、金色の光。
「・・・デオン?」
端末のモニタから顔を上げると、デオンが来ていた。
「ルーク、お前、ずいぶんと余裕だな」
「あ?」
言われた意味がわからず、聞き返す。
「今日だぞ、式典」
「?」
ますますわからない。
「俺と一緒に出席すると、返事をしなかったか?」
「あーーーー?」
言われてみれば、そんな気もしないではないが。
『今日だったか?』
というのが本音だ。
そういえば、本体が数日前から「日食だ~」とは盛り上がっていたが、
それとこれとが結びついていなかった。
「・・・・・・」
「お前、すっかり忘れていたな・・・」
まあ、部屋に来た段階で、予想はついていたけど。
途中から、小声で言われる。
申し訳ないほど、すっぽりと記憶から抜けていた。

「やっぱり早めに来て正解だったな。
 今日は正装だ。羽根も出して。
 だから、とりあえず、シャワーを済ませてこい」
「はぁ?羽根?」
そんな、正式の正装なんて・・・今日の式典はなんなのだ?
自分も招待状に目を通したはずなのに、それを棚上げして思う。
が、反論するまもなく、ぐいぐいとバスルームに押しやられる。
「早くしろよ。でも、丁寧に!」
なんて難しいことを言うのだろう。
「はぁ」
一緒に行くなどと安請け合いをしなければよかった。
ルークは溜息をついた。

ぶぉぉぉ~。
「・・・・」
半分ブルーになりながら、バスルームから出たら、
待ってましたとばかりに、デオンにつかまった。
「お前な・・・もう少し、真剣に拭くって気はないのか?」
そういいながらも、雫の落ちる、髪の毛はもちろん、
羽根までバスタオル数枚を使って拭きあげられた。
髪は今、ドライヤーで乾かされている。
「大丈夫か?」
声をかけられ、はっとする。
「・・・本体が・・・あまり調子が良くないらしい」
3次元での生活リズムの狂いに、DLした内容への抵抗、
それに日食のエネルギー変化が加わり、
朝から、『インフルエンザみたい~、そんなことないけど』と思うほど、
体の節々がだるそうだ。
おかげで、なんとなくルークの体も本調子ではない感じでいた。
まして、正装して式典となると・・・。
「はぁ」
本日2度目の溜息が出た。

「お前はこれに着替えろ」
有無を言わさず、手渡された服はタキシードだった。
見るからに、ちゃんと自分のサイズに合わせてつくってある。
よくまぁ、ここまで準備できたものだ。
「・・・はい」
素直に着替えることにする。
「俺もこの間に着替えるから」
そういって、デオンは寝室に姿を消した。

鏡の前で、ネクタイを整える。
『・・・変なの』
カフスだの、ポケットチーフだの・・・。
本当に自分はこういうのにはむいていないと思う。
その辺にある服を着ているのが性に合っている。
「はぁ・・・」
「そんなに溜息をつくな」
部屋から出てきたデオンが、溜息をとがめる。
「そうは言っても・・・っ」
振りざま、デオンの姿を見て、息を飲む。
軍礼装だ。
「・・・どうして、軍礼装なんだ?」
「そりゃ、軍人だからな」
そういいながら、デオンはルークの方をぐいっと掴み、二人の距離を程よくとらせる。
なされるがままに、左右に体を回され、背中を向けさせられる。
首をひねって、きく。
出している羽根が邪魔で、顔が見えない。
「じゃ、俺はどうして」
「お前は研究者だろ」
ぐるっとまわされ、正面に向けられる。
「でも、最後は・・・」
「もう、着なくていい。
 ・・・ってか、もう着させない」
一歩踏み出し、ネクタイの位置を「う~ん」と調整している。
「よし、いいな」
デオンは満足そうに微笑んだ後、ちょっと背伸びして、
ルークのおでこにキスをした。

「あ、そうだ!危ない危ない」
デオンが思い出したように声を上げる。
「なに?」
リビングのチェスト、一番上の引き出しを開けて、何かを取り出した。
手に隠れて、よく見えない。
「ほら」
差し出されたものをみて、息を飲む。
「・・・これは・・・」
「前のは、お互いなくしてしまっただろう」
なくしてしまったのではない・・・。
お互い、肉体を失ったときに置いてきてしまったというのが正しいのだと思う。
「だから・・・」
デオンが優しく微笑んだ。
『やられた』と思う。
この男は昔から、イベント事など好きだったのだ。
「日食の最初と最後に見られるものは?」
「──ダイヤモンドリング・・・」
そっと左手を取られる。
「これはダイヤモンドリングじゃないけどな」
指にはめられたそれは、金色の縁に銀の指輪だった。
「永い時を超えて・・・逢えた奇跡に」
デオンがそっと指輪に唇を落とした。

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この後、デオンさんもルークに指輪をはめさせ、ご満悦。
おそろいの指輪をして、式典に出かけたかったらしい。

式典で二人共通の、昔の・・・過去の知り合いに会うんだけど、
皆、二人でいるのが当たり前って感じで、口々に「よかったな」を連呼。
たまに、ど突かれてましたw

なんかね・・・現在の方が感情表現がオープンです。
吹っ切れたら、も~~、このオープンさが微笑ましいですわ(苦笑・若干嫌味あり)

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あっ。大事なこと、忘れてました♪

デオンさんの本体さんがわからないので、私が感じたままに物語として書いていますが
もし本体さんがいらっしゃいましたら、すり合わせの上訂正する可能性もあります。

↑さつきのひかりさんに、お知恵を拝借しました(笑)
さつきのさん、ありがとうございます~
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エルンストと並んでボディチェックを受ける。
「じゃ、これつけて」
左胸の部分だけのプロテクターのようなものを渡される。
手馴れた様子で身につけるエルンストを参考に、ルークも身につける。
「どちらかが、このプロテクターを突いた時、または降参した時を、終了とする」
そう言われる。
あとは特別ルールはないということか。
「ルーク」
デオンが話しかけてきた。
「うん?」
「その装備で、大丈夫なのか?長剣は持たなくてもいいのか」
緊張した面持ちで問われた。
「さっき、一度手にしたんだけど。やっぱり、重いし動きにくいからいいよ」
足につけた短剣数本を、これがあれば・・・と示す。
「だが・・・俺のでよければ、貸すが?」
「いいよ、必要ない」
軽くストレッチをしながら、答えると、
「クスッ」とエルンストが笑いを漏らした。
「本当に過保護・・・ってか、溺愛しているって噂は本当なんだ。
 隊長が、自分の剣を貸すって言ったの、初めて聞いたよ、僕」
口調は愉快そうだが、目は冷ややかなものになっている。
『これって、まずくないか』ルークは思う。
「ちょうか~~ん、命に関わらなければ、手加減しなくていいんだよね?」
エルンストのこのセリフを聞いて、自分の予感が当たったのを実感した。



模擬戦の会場として使われることになった部屋・・・というか倉庫(?)は、木こそないが岩場だの水場だのがある、荒野のようなものだ。
ここの場をフルに使って、闘えというものらしい。
『どうしたものだか・・・』
エルンストと数メートル離れた位置で向かい合い、ルークは考えていた。
『ま、しばらくはしのげるところまでしのいで様子をみるしかないか』
ホイッスルのようなブザーのような、ちょっと間の抜けた音がする。
開始だ。
ガッ
『早い』
想像していたよりも速いスピードでエルンストは飛び込んできた。
シールドを作ってガードする。
ガン ガン ガン
立て続けに剣を振るわれる。
もちろん、シールドをはって回避する。
ザッ
双方距離をとって離れた。
『シールドは大丈夫そうだな』
息を整えながら、ルークは思う。
長年、使ってきたシールド系の魔法は、エルンストのスピードに対処できるくらいのスピードでかけることができそうだ。
『・・・だが・・・』
手を滑らせる。
「うっ」
踏み出そうとしていた、エルンストが足を止める。
が、数秒で動き出す。
『捕縛魔法のかかりが悪い』
避けながらルークは思った。
彼のスピードを考えれば、今の倍以上、足止めができなければ、懐まで踏み込めない。
『一般的な魔法じゃ、プロには太刀打ちできないか』
魔法がかからないわけじゃなく、かかってもすぐエルンストが解除できるということだ。
『実戦への課題だな』



「防戦一方で、やる気があるのかっ」
焦れて、エルンストが叫んだ。
何度もエルンストが切り込もうとしてシールドではじかれて、切り込んでははじかれを繰り返している。
ある意味、しょうがないとも思う。
使っている武器からして、方や近距離戦向き、方や遠・中距離戦向きなのだから。
おまけに、シールド魔法ではルークは年季が入っている。
消耗戦になってくるのは、必然だった。
だが、消耗戦になってきて不利なのはルークの方だ。
やはり、スタミナが全然違う。
『どこかで動かないと』
それはルークも重々承知していた。
「あんたがルーク?」
自分よりも数センチほど低いところにある目が、強い視線を送ってきた。
ウェーブしたレモンイエローに近い金髪。瞳自体が発光しているのではないかと思うような、不思議な緑色をした目。腕組みした腕。
全体の雰囲気が凛とした雰囲気を漂わせている。
「はい」
「へ~。隊長が5年かけて口説いたって言うから、どんなのかと思ったら。
 ひょろい男なだけじゃん。使えるの?」
値踏みしていた視線をはずし、デオンに話しかけている。
初めから、(研究所)所長や***が言っていたようなことになるとは。
『想像以上に言われそうだな』
ルークは改めて覚悟を決めなくてはと思った。
「やめないか、エルンスト」
「だってさ、5年だよ5年っ。誰だって、期待するよ」
エルンストは若干恨めしげな目でデオンを見上げている。
この髪の色と髪型からして、ひょろく見えるのもしょうがない。
体のほうはそれなりに引き締まってはいるが、長年軍隊で鍛えていた者とはどうしても差がある。
ましてや研究所からの配属換えとわかっていれば、ただの科学者ぐらいにか見えないのは否めない。
「いや、俺も知りたいよ、使える奴かどうか」
「・・・カイザー」
お前もか、という感じでデオンが壁にもたれて立っている黒髪の男に目をやる。
視線を追って、ルークもその男を確認する。
カイザーと呼ばれた男は・・・実に変った髪型をしていた。
左右非対称で、・・・右側は前髪が目が見えないくらいに長いが、左側は刈ってある。
濃い、グレーの瞳が、本来の瞳よりも奥行きを増して見えて、吸い込まれそうな感じだ。
「じゃ、模擬戦でもしてみたらどうかの?」
長官(本来は総隊長と言うのだろうけれど、なぜか皆“長官”と呼んでいる)が、面白そうに笑う。
「長官・・・無責任なこと言わないでください」
デオンがすかさず、長官をたしなめるが、
「じゃ、僕がいきます」
エルンストと呼ばれた男が手を上げた。
シャッ
ドアが開く。
「・・・遅くなりました」
一人の男が現れた。
「フェーン」
デオンが呼ぶ。
フェーンと呼ばれた男は明るい金茶色の髪を短く刈り上げている。
薄紫色の瞳。
デオンに近い身長だが、体の筋肉量はフェーンの方が倍くらい多いのではないかと思うほど隆々としている。
そして・・・彼の左腕・・・二の腕は義手だった。
『あれは・・・』
ルークが記憶を探ろうとしていたところ・・・。
場の雰囲気が微妙なのを察したのか、フェーンはデオンに声をかける。
「なにがあったんだ?」
「エルンストとルークの模擬戦を、長官がご希望だ」
『いや、そんな話じゃないだろう』
聞いていたルークは思うが、さすがに突っ込めない。
当てこすりのように言われた長官も、
「そうなんじゃよ、どのくらいの腕前か、みて見たいじゃないか」
などと言う。
「ま、俺も興味がないといえば、嘘になるな」
チラリとルークに視線を送り、フェーンが言った。
模擬戦は決定されたようだ。
「はぁ」
デオンとルークは、同時に溜息をついた。
「それ、どうなってんの?」
後ろから声をかけられて、びっくりした。
「え、なに?」
「さっき、崖を降りる前から今まで見えているやつ。
 なんか、薄い光の膜みたいな感じ?のが体を包んでる」
エル・フィンがルークからちょっと外側に視線を送りながら聞いてくる。
「これ、見えている?」
うーんと、と思い、ルークは自分を取り巻いていたフィールドを解除する。
「あ、今、消えた」
「エル・フィンには見えるんだ。すごいな!」
崖を降りる時に、ふと思い出して、先日覚えた保護フィールドを発動してみた。
なんとなく、守られているって感じはするけれど、フィールド自体は自分に見えていなかったから、ちゃんとできているかな?とは思っていたけど。
フィールドが見える人がいるのは、大発見だ。
「今のなに?」
「ごめん、秘密~」
「なんだよ~?」



本棚の前でルークは固まっていた。
『フィールドとか魔法の見方・・・』
漠然としたイメージで本を探すのは、意外と難しい。
背表紙から、これだ!と思って手にとってはみるが、中を読むとルークがほしい情報と違っているものが多すぎたのだ。
「どうしたんだい?ルーク?」
柔らかな声。
他の人のことを考えて、控えめなのだけど、それでいてその声ははっきりとルークに聞こえた。
本棚の・・・列の入り口をみやると、案の定、そこにケイはいた。
『なんていいタイミングだろう』
「ケイ」
ルークは邪魔にならない程度に、ケイに駆け寄った。



今日の発見。
エル・フィンには魔法で作ったフィールドが見えている。
ケイから、フィールドが見える人がいるのを、教えてもらった。
「よっ、お疲れさん~」
ドアが開いて、声をかけられた瞬間、まずいと思った。
エルンストだ。
「うん、来てくれたんだ」
一瞬しかめた顔は、マシーンの負荷によるものだと思ってくれるといいのだが。
「うん、隊長は夜まで忙しそうだから~、俺だけ来ちゃった」
うしししと笑う。
若干、身の危険を感じるものの、あと、3回で一区切りというところだ。
ルークは気にせずトレーニングを続けることにした。
エルンストはトレーニングを続けるルークをチラッとみて言う。
「やっぱり、少しそげたよね」
「そうか?」
あまり自覚は無い。
さすがに昨日トレーニングを開始した時には、ばてるのが早くて、トレーニングメニューが的確に作られているのを感じたが・・・。
今日になり、ずいぶんと勘が戻ってきた気がする。
『1、0』
マシーンから手を離し、側においてあったタオルで汗を拭う。
「うわっ」
思わず声が出る。
エルンストが脇腹を撫で上げたのだ。
「な、何っ」
「そんなに驚くこと、ないじゃん」
ぐいっ
思わず、身を守るために無意識に引き締めた脇を片手であけられる。
「ほら、こ、前より浮いてるじゃん」
肋骨を上から一本一本触られる。
く、くすぐったい。
「もっと食った方がいいよ、ルークは」
そういいながら、顔が近づいてくる。
『こ、このパターンは・・・』
昨朝を思い出し、焦る。
顔が、近づきすぎ、『避けられない』そう思った時、
「何しているんです、きみは」
声がした。
「わ、先生~っ」
エルンストはルークの腕を放し、医師に駆け寄る。
「やった~、先生にもう一度会いたかったんだよね」
腕を取ってご機嫌だ。
「診察をするので、出て行ってもらえますか」
医師はとられた腕をするりと抜きながら言う。
「え、ここで?」
エルンストはキョロキョロとする。
トレーニング室でというのが言いたいらしい。
「隣でです。きみは病室の外へ出ているように」
医師がエルンストの背を押す。
ルークもそれにつられて、立ち上がって、後を追う。
「えっ、ここで待ってちゃダメなわけ?」
「ダメです」
ぐいぐい、ぐいぐい、背中を押されるエルンスト。
「なんでさ、部屋で二人っきりなんて、ずるいっ」
「ずるいとか、そういう問題じゃないでしょう」
病室を横切り、ドアからエルンストを押し出す。
『すごい・・・』
エルンストも本気で抵抗している訳じゃないが、手際のよさにルークは感心する。
「隊長に言いつけてやるからねっ」
ドアを閉められる直前、エルンストが最後に悪あがきをする。
「どうぞ、ご勝手に」
そういって、医師はドアを閉めた。
「・・・・・・この分だと蹴破るかな?」
ドアの前で、独り言・・・だろうかを言う。
ルークを見やり、「念のため、シールドをはっておいていいですか」と確認する。
「ええ」
短期間でエルンストの性格も見抜いているらしい。
場合に寄っては、焦れたエルンストが強行突破してもおかしくないとルークも思う。
「では」
すいっ、医師が手を動かす。
一瞬にして精妙なシールドが病室全体を包む。
「──っ」
本当にこの医師は何者なのだろう。
手の動き、作られるシールド・・・はるかに自分を凌駕している。



「では、診察をしましょう」
診察と言っても、手を触れられたりはしない、頭からつま先まで、ざっと見られるだけ。
「念のため、後ろもむいてもらえますか」
言われて、ルークは後ろを向く。
「ちょっといいですか」
背中の真ん中辺りに・・・手をかざされている感覚がする。
「こちらを向いて、目を見せてください」
言われて、振り返り、顔を向ける。
右目を真剣に見つめられ、視線が泳いでしまう。
「・・・いいでしょう」

「体の方は問題ないようですね。・・・後は、心。
 ベッドに腰掛けてもらっていいですか。
 私も座らせてもらいます」
そういった次の瞬間、医師の側には椅子があった。
安物の椅子ではない、長時間座っていても疲れを知ることなどないような、重厚でいてくつろげそうな椅子。
そこに医師は腰掛ける。
「何か変ったこととかありますか?
 ・・・よく、双子の場合、どちらかが亡くなると・・・
 “半身を失ったような”という表現を聞きますが・・・、
 それに似た感じとかは感じていますか?」
静かに聴かれる。
「・・・・・・“半身を・・・”・・・。
 ・・・そうかもしれません。
 この間まで・・・朝起きて、ルーシャンスの気配を感じて・・・。
 一日中、つながったままの感覚があって・・・。
 ・・・・・・・・・・。
 失うまでは気付かなかったんです・・・、
 自分がそんなことをしていたのを・・・。
 昨日の朝、無意識に伸ばした感覚の先が・・・すかっと空振りした時、
 「ああ」と思いました。
 独りなんだと・・・
 ・・・・・・皮肉なものですね。
 俺が・・・ずっと・・・独りになりたくて頑張ってきたのに
 こんな形で・・・独りになるなんて・・・」
ルークは目を伏せた。


優しい、それでいて物悲しい・・・かすかな音。
それを、耳で拾った。
『・・・これは・・・』
それはルークが幼い頃聞いたことのあるメロディ。
注意深く、そっと体を起こす。
足をしのばせ、隣で寝ていたデオンをまたぎ、エルンスト、フェーンにも気付かれないよう、そっとテントの入り口を開ける。
もちろん、風が入らないよう、細心の注意を払った。
「ふぅ」
テントから出て、一息つく。
「ルーク、どうした?」
2時の方向、上のほうからカイザーの声がする。
「・・・今、*****(ハーモニカみたいな楽器)の音がした気がして」
月明かりで辺りは明るいが、カイザーが陣取っている辺りは陰になり姿がはっきりしない。
あたりをつけて、ルークは顔を上げた。
「俺だ」
「・・・さっきの曲。子どもの頃よく聞いたし、歌った曲だ」
「歌った?」
「うん、合唱団に入らされてた」
「合唱団?お前が」
カイザーの口調に愉快さが混じる。
「双子で幼い頃は小さかったし。二人揃うと・・・」
「ふふふふ」
最後まで言わなくても、想像がついたのか、カイザーが笑う。
「よし、歌ってみろ」
「無理だよ、高すぎて歌えない」
子どもの頃歌っていた音域は既にでなくなって久しい。
「じゃ、これでどうだ」
カイザーが先ほどよりも低い音で*****を吹く。
旋律をいくつかやり過ごし、途中から、声を乗せる。
「~~~~~ ~~~~」
初めは固かった喉が、徐々に開かれていくに従い、声も優しさを帯びたものになっていく。

「すごいじゃないか」
カイザーが言う。
「合唱団にいたことすらさっきまで忘れていたのにね」
ルークは苦笑いする。
体が覚えたことというのは数十年経っても忘れないのだろうか。
ふと、合唱団の先生の顔が思い浮かび、ダメだしをされたことなどを思い出す。
「じゃ、#####は歌える?」
カイザーが曲名を言う。
「え、どんなの?」
「こんなの」
そういって、カイザーは#####を吹き始める。
「ああ」
『じゃ、続けるから』
心話で歌うよう、促される。



野営の夜は、いつもよりも優しく過ぎていった。
前後がなくって、本編に入れていないエピソードを“幕間”としてアップしていきます。
もしかしたら、前後が出てきて、本編に入ることもあるかも?

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退院後・退院祝いなのか、別の機会で5人で呑みに行ったのか?
ルーク・エルンスト・カイザーの順でカウンター席に座っている。



「愛に理由なんてないんだよ。
 愛される方は、自分は何々だから愛されるとか、理由を見つけようとしたり、
 与えられる愛を何々の愛、何々の愛と分類しようとする。
 そうじゃなくて、ただ“愛おしい”という気持ちを、そのまま受け止めてくれればいい。
 愛っていうのは、シンプルでいいんだよ」
至極真面目な顔で、エルンストが言う。
ルークは普段のエルンストとの差に、びっくりしていた。
凛とした姿に、言葉の重みも増すようだ。
言われた言葉を心の中で反芻していると、「ルーク」と呼ばれた。
うん、という感じで顔を向けた途端、エルンストの顔が近づいてきて、右目にキスをされた。
「──っ」
思わず、身を引く。
『このパターンは・・・・・・どうすればいい』
病室で何度か繰り返されたこのパターン。
エルンストの後ろに見える、カイザーに視線を送るが、我関せずという感じで、こちらに背中を向けて呑み続けている。
「ルーク・・・」
『逃げよう』と決心した時だった、
ぐいっ
「うわっ」
体を後ろに引かれ、椅子から転げ落ちそうになったところで、背中に何かが当たり、落ちずに済んだ。
「お前は愛を安売りしすぎなんだ」
背後からする声。デオンだ。
『助かった・・・』そう思いながら、そろそろとカウンターに手をつき、椅子からずり落ちた体勢を直した。
「帰るぞ」
デオンに声をかけられる。
ルークは無言で席を立った。
「ちょっと。ずるいよ、ルークを独り占めしてっ」
エルンストがデオンに抗議するが、デオンは涼しい顔で聞き流す。
「・・・支払いは済ませてあるから。カイザー、そのボトルは飲み切ってしまってもいい」
カイザーに声をかけながら、デオンはぐいぐいとルークの背を押し、ドアへと誘導する。
「あ、ちょっと待ってよ。僕も帰るからっ」
わたわたとエルンストが立ち上がった時、ドアが閉まった。

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お昼前、キッチンで洗い物をしていた時に、きました。
思わず、ルーク同様、傾聴しちゃいましたよ。
『おお、そんな考えがあるのか』みたいな感じで、過去ルークと二人思って。
「時間が経たないとわからないものってあるよね」と現ルーク。
なんか、エルンストの言う愛の感覚、今になってわかるらしい。
おまけに、ウドルフォまで出てきて、うんうんって感じで。
本体の私は『・・・・時代を超えて・・・(遠い目)』って思いました(笑)
エルンストの愛語り、やっとルークとおまけにウドルフォにも届いたようです(大笑)


チラリ。
医師の視線が自分に注がれる。
そして、その後ろに視線がうつる。
「あ~~、僕が来たときには二人とも、全裸でしたよぉ!」
状況を読むのが早い、エルンストは医師の腕を取り、ニコニコしながら言った。
『嘘をつくなっ』
多分、デオンも同じことを思っただろう。
無論、二人ともきっちりとパジャマを着ていた。
するりとエルンストから腕を抜き、医師はルークの側に立つ。
「これ」
ルークの右腕を持ち上げ、手首についている機械を指差す。
「これで脈拍、血圧、起床に入眠までチェックできるので。
 よからぬことをしようとすれば、ドクターストップがかかりますよ」
エルンストに向かって言う。
「な~~~んだ、バレバレかぁ。つまんないの」
エルンストは悪びれた様子もなく、笑う。
「・・・まったく。賑やかなのは結構ですが・・・。
 診察しますので、皆さんは出て行ってください」
動じることなく、医師は言う。
「え、このままの格好でか?」
デオンはパジャマ姿の自分を指さす。
「い~じゃん、い~じゃん。病院なんだし~。
 あ、隊長~、僕、喉が渇いたよ。飲み物おごってよ」
エルンストがデオンの腕をぐいぐいと引っ張り、病室の外に連れ出す。
カイザーが出て行くときに、視線を送ってくれた。
『頑張れよ』
心話が伝わってくる。
──頑張れって何を?
聞き返す間もなく、カイザーの姿はドアの外に消えた。

「胃が重いとかそういうのはない?」
「ありません」
医師が質問しながら手早くルークのチェックをしていく。
「量が少ないとか、お腹が空くとかは?」
「・・・特に」
「消化がいい分、お腹が空くという人が多いんだが・・・。
 きみは元々、小食なのかな」
聞かれるまで気付かなかった。
「・・・言われてみればそうかもしれません」
「じゃ、このままでO.K.ということで」
空中で医師が手をスライドさせる。
次の瞬間、手には紙。
本当に早くて、わからない。
その紙をルークに手渡しながら、医師は続けた。
「あと、簡単なリハビリ計画。
 隣にトレーニングジムがついているのは知っているね?」
「はい」
「使い方がわからなかったら、遠慮なく聞けばいい。
 この通りにやってみて、体が辛くなかったら、倍まで増やして良いそうだ」
「わかりました」
メニューに目を通しながら、返事をする。
今の体調だったら、午後にでも倍まで増やせるだろう。
「あと・・・」
医師が言葉を濁す。
「はい?」
「あんまりうるさかったら、お見舞い禁止にするからね」
「・・・はい」
エルンストのことを言っているのだろう。
「言って聞かせておきます」
ルークは小さくなって頭を下げた。
「あーー、なに二人してくっついて寝てんのさ」
急に賑やかになる。
意識は浮上しつつ、それでも入ってくる言葉は素通りして、ルークの中では意味の形をなさない。
脇腹のあたりが軽くなる。
「も~、この手、いやらしいなぁっ」
「エルンスト、うるさい。ルークが起きるだろう」
「わざとうるさくしてんの。あんたの顔じゃなくて、ルークの顔を見に来たんだから。
お見舞いだよ?ルークに起きてほしいのっ」
頬にかかった髪をそっとよけられ、頭をなでられる。
この大きな手は気持ちいい。
「だーーー、だから止めろってば。触るな」
パチン
大きな手から伝わる、鈍い刺激。
「う~~ん」
寝返りを打つ。
毛布が体に絡みつき、頭が枕から外れて、落ちる。
それに構わず、手足をぐ~~~っと伸ばす。
と、逆に寝返りを打ち、枕に顔を乗せる。
ああ、この枕の肌触りは気持ちいい。
何度か頬を摺り寄せた。
「うわ~、色っぽいよ~。
 隊長、こんなのが隣で寝てて、平気なん~?
 僕だったら、味見してるかも」
「お前とは絶対、同室にしないからな」
やっと、ただ耳の中を流れていた言葉に意識が向きだす。
・・・この声、・・・しゃべり方。
「エルンスト?」
枕から顔をはがした。
「当たり!ルークったら、なかなか起きなかったから、
 目覚めのチューをしちゃうとこだったよ」
エルンストはにっこり微笑む。
「・・・はぁ」
思わず、ルークは溜息をつく。
黙っていれば、凛とした男なのに、口を開くと軽口しか叩かない。
ベッドの上で体勢を取り直し、縁に腰掛ける。
と、デオンのそばにいたエルンストはベッドの足元を通って、こちらにやってくる。
「どれどれ~、よくなったかい?」
強制的にあごを持ち上げられる。
「こら、エルンスト」
背後でデオンが慌てて起き上がる。
顔を見たエルンストだが、やはり右目で視線が止まった。
「さわるな」
デオンがベッド伝いに横にやってきて、顎にかかっていたエルンストの手を跳ね除ける。
エルンストは手を跳ね除けられたのも気にせず、左右の目を見比べている。
「ふーん、オッドアイかぁ~。いいんじゃない。似合ってる。
 僕と同じ、緑色っていうのもいいね~」
と、なかなかご満悦顔だ。
『緑って言っても色はかなり違うけど・・・』
ルークはエルンストの目を見ながら思う。
エルンストの色はクリソプレーズのようだ。
対して自分はグリーンアゲートかエメラルドのような色合いに感じる。
ずい。
急にエルンストの顔がどアップになったと思うと、右目のこめかみにキスを落とされた。
そして顔が正面の位置に。
ぐいっ
後ろに身を引かれ、
ぼすん
と布団に倒れこんだ。
「ちぇっ、未遂か~、残念っ」
唇が触れ合う、直前にデオンが機転を利かせたらしい。
「お前は、油断も隙もあったもんじゃないな。
 ルークもボーっとするんじゃない」
パカンと頭部に突っ込みを受ける。
痛い。
「いいじゃん、減るもんじゃないし~。ね、カイザー」
急にカイザーに振る。
壁に寄りかかり、同化するかのように静かに立っていた男に、やっと気付く。
「減るんじゃないの?隊長にとっては」
ボソッと言い放つ。
「だ~~、カイザーまで、隊長の味方!?
 第一、隊長はルークを溺愛しすぎなんだって!」
「その通りのようですね」
「えっ」
思い掛けない相槌にエルンストが振り返る。
『また、気付かなかった』
ルークは思う。
そこには、担当の医師が来ていた。
目を開けて、暗い空間の中、ところどころに光る機械のいくつもの小さな光を追っているときだった。
「手を・・つないでくれないか」
「え?」
光を追うのに夢中で、一瞬、意味がわからなかった・・・が、慌てて、左側にいるデオンに向かって手を伸ばす。
デオンがこんなことを言うのは、初めてだ。
伸ばした手は、何度も空を切る。
指先が何度かぶつかった。
ベッドの際までにじり寄り、再度挑戦し、やっとデオンの手をつかんだ。
「く、苦しい・・・」
ベッドの際で体が落ちそうなのと、ベッドとベッドの間の空間に浮かんだ手を維持するのは結構、辛い。
こういう時は・・・。
つかんだデオンの手を離し、ガバッと起き上がる。
「・・・ルーク?」
怪訝そうな、気だるげなデオンの声を無視して、頭の辺りを探る。
あった。
パッ
小さな室内灯が灯った。



ウィーンという音とともにベッドの位置が上がる。
高さを調節し、二つのベッドの高さを同じにした。
「よしっ」
ルークはベッドに座った。
「消すぞ」
消した直後、視界が暗くなる。
目が慣れてくるのを待ち、もぞもぞと毛布をかぶる。
そして、電気が消える前に確認したあたりに、左手を這わせる。
あった。
デオンの手をしっかり握り締める。
「ありがとう・・・」
一週間、まともにベッドの上で寝ていなかったのだろう、ルークがベッドを移動させたりしている間、デオンは何度も意識を飛ばしては、はっと目を覚ましていた。
「おやすみ」
ルークは声をかけた。
たくさん眠って、疲れがとれるといい。
そう願わずにいられない。
と、デオンがボソボソと言う。
「・・こうやって、触れていられるのも・・・、奇跡なのかもな・・・。
 ・・・ありが・・とう・・・お・や・・す・・・み・・・」
規則的な寝息が隣から聞こえ始めた。
言われた意味を考えて、ルークは涙がにじみそうだ。
自分の直感を信じるならば・・・デオンはルースの遺体を見ているはずだ。
直にではないかもしれない。
・・・絶対、ルースとルークを重ね合わせただろう。
今日、再開したときに“怖い”と言ったデオンを思い出せば・・・。
手をつないで寝るのなんて、とても簡単なことだと思う。
それで安心してもらえるのなら・・・怖さがなくなるのなら・・・。
デオンのこの一週間に心を馳せる・・・。
「こちらこそ、ありがとう・・・」
聞こえないのは承知で、言った。
小さな光がじわりとにじんで見えた。
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神秘幾何学なんかも大好きです。
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